「洗剤の会社」では、
語りきれない。
花王とは何者か。
花王(証券コード 4452)は、アタック・メリーズ・ビオレなどで知られる日本最大級の日用品メーカー。化粧品(カネボウ等)や化学品(ケミカル)まで手がけます。最大の特徴は35年を超える連続増配——日本記録です。化粧品の不振から立ち直りつつある“生活インフラ企業”を、むずかしく感じても大丈夫、順番にほどいていきます。
数値の基準時点:決算=2025年12月期(2026/2/5発表・IFRS)/ 株価・指標=2026年6月下旬時点の概算(株価約6,240円)。出所:花王 決算短信〔IFRS〕・決算説明会資料・有価証券報告書、IRBANK、各証券・金融情報サイト。数値は変動するため最新の一次情報をご確認ください。
- 01花王はアタック・メリーズ・ビオレなどを擁する日本最大級の日用品メーカー。化粧品・ケミカルも手がけ、最大の顔は国内最長(36期連続)の増配です。
- 0225.12期は売上収益1.69兆円・当期利益1,201億円(+11.4%)。化粧品が黒字転換し、2023年の利益急減から構造改革で回復してきました。ただし2019年のピーク(純利益約1,480億円)にはまだ未達です。
- 03配当利回りは約2.5%と地味ですが、毎年増配を続ける安心感が魅力。2026年7月には1→2の株式分割も予定。「高利回り」より「増配の継続」で持つ株と覚えればOKです。
毎日の暮らしを支える、
日本最大級の日用品メーカー。
花王のはじまりは、明治時代の「高級な化粧石けん」。そこから130年以上かけて、洗剤・スキンケア・紙おむつ・サニタリー・化粧品、そして化学品まで広げました。いまや家の中のあちこちに花王の製品がある——そんな“生活インフラ”のような会社です。
覚えておくと早いのは、花王が「消費者向けの日用品」と「企業向けの化学品(ケミカル)」の二刀流だということ。日用品で生活者の信頼を、化学品で他社の製品づくりを、それぞれ支えています。
創業(洋小間物店)
輸入雑貨などを扱う商店として創業。のちに「花王石鹸」を発売し、高品質な石けんで名を上げました。社名の由来は「顔(かお)を洗う石けん」。
洗剤・日用品の王者へ
衣料用洗剤「アタック」、台所用洗剤、シャンプーなどで国内トップ級に。スキンケアのビオレ、紙おむつのメリーズなど定番ブランドを次々に育てました。
カネボウ化粧品を買収
カネボウ化粧品を約4,100億円で買収し、化粧品事業を本格的な柱に。スキンケア研究の強みと合わせ、国内有数の化粧品会社になりました。
国際会計基準(IFRS)へ
会計基準をIFRSに移行。グローバルに事業を比較しやすくし、海外展開を加速させました。
つまずきと構造改革
化粧品の不振・在庫調整・原材料高が重なり、純利益が約439億円まで急減。これを機に不採算ブランドの整理や原価低減(TCR)など、本格的な立て直しに着手しました。
回復と「K27」
中期経営計画「K27」のもと、化粧品の収益改善とグローバル展開、ROEの改善を進めています。2026年7月には1→2の株式分割も予定。
日用品で稼ぎ、化学品で支える。
花王の事業は大きく、生活者向けの日用品(コンシューマー)と、企業向けの化学品(ケミカル)に分かれます。日用品は洗剤・スキンケア・化粧品など、化学品は油脂や情報材料など。身近な製品と、その裏方の素材——両方を持つのが花王の形です。
ハイジーン&リビングケア(最大の柱)
衣料用洗剤アタック、ハウスケア、ハンドソープなど。家庭の“清潔”を支える日用品で、売上の約3分の1を占める最大事業です。
ヘルス&ビューティケア
スキンケアのビオレ、ヘアケア、サニタリー(ロリエ)、温感のめぐりズムなど。美容と健康にまたがる、生活者向けの2番目の柱です。
化粧品(回復のカギ)
カネボウ・SOFINA・KATEなど。中国市場の落ち込みなどで長く苦戦しましたが、構造改革で2025年に黒字転換。立て直しの主役です。
ケミカル(企業向け・素材)
油脂製品や界面活性剤、半導体向けなどの情報材料。他社の製品づくりを支えるB2Bの素材事業で、原料市況や景気の影響を受けます。
ビジネスコネクティッド ほか
業務用製品など法人向けの事業(旧「ライフケア」を2024年に再編)。規模は小さめですが、企業や施設の現場を支えます。紙おむつメリーズもアジアで展開。
※ セグメント名や区分は会社の開示に基づく整理です。花王は2024年に事業区分を再編し、旧「ライフケア」は「ビジネスコネクティッド」へ。構成は年により変わります。
主力は日用品。利益のカギは「化粧品の回復」。
売上で見ると、洗剤など生活者向けの日用品が中心で、化学品(ケミカル)と化粧品が続きます。不況に強いディフェンシブな土台に、回復途上の化粧品と景気に振られるケミカルが乗っている——この組み合わせです。
売上高の構成
2025年12月期/セグメント売上高・概算構成比※ あくまで概算イメージです(セグメント間の取引を含むため合計は連結売上を上回ります)。ハイジーン&リビングケアとヘルス&ビューティが生活者向けの主力。そこへケミカルが約4分の1、そして長く不振だった化粧品が回復の主役として乗っています。
3つの役割で読み解く
同じ「稼ぎ」でも、景気や競争への強さは事業ごとに違います。3分類で見ると、花王が“安定と回復の同居”である理由が見えてきます。
安定
ディフェンシブ洗剤やスキンケアは景気が悪くても毎日使う必需品。需要が崩れにくく、安定したキャッシュを生むのが花王の土台です。連続増配を支える源泉でもあります。
回復
伸びしろ長く赤字すれすれだった化粧品が、構造改革と中国市場の持ち直しで黒字転換。ここが本格回復すれば、会社全体の利益を一段押し上げる伸びしろになります。
変動
景気に振られる企業向けの化学品は、原料市況や半導体・世界景気に業績が左右されます。好調なら全体を底上げし、需要が冷えると重しに。振れの大きい事業です。
底は打った。ただし“元の高さ”には未達
2023年の落ち込みからは明確に立ち直り、化粧品も黒字化。日用品の安定もあって、利益は回復基調です。ただし2019年ごろの利益水準(純利益約1,480億円)にはまだ届いていません。
つまり花王は「絶好調」ではなく「回復途上」。安定した日用品を土台に、化粧品とグローバルでどこまで稼ぐ力を取り戻せるかが、いまの主題です。
出所:花王 2025年12月期 決算短信・決算説明会資料。構成比は売上高の概算で、区分・金額は変動します。
2025年12月期は、増収・2桁増益。
2026年2月5日発表の通期決算(2025年1月〜12月/花王は12月決算)です。売上・利益ともに伸び、とくに利益は2桁増。長く重しだった化粧品が黒字化したのが大きなポイントです。まずは事実としての数字から。
当期利益の推移と来期予想
単位:億円 / 親会社の所有者に帰属する当期利益2023年の439億円が谷でした。化粧品の不振や在庫調整、原材料高が重なり純利益はほぼ半減。そこから構造改革と化粧品の立て直しでV字回復し、2025年は1,201億円。ただし2019年のピーク(約1,480億円)にはまだ未達です。
化粧品が黒字転換、稼ぐ力が改善
長年の課題だった化粧品の営業利益が前年から大きく改善して黒字に転換。中国市場の持ち直しと、重点エリアへの集中・固定費の削減が効きました。
原材料高(約85億円の減益要因)を、高付加価値化と原価低減(TCR)で吸収。外部環境の逆風を内部努力で打ち返した決算です。
回復“途上”で、ケミカルは弱含み
2桁増益とはいえ、利益はまだ全盛期の水準には戻っていません。化粧品の回復も「黒字化」の段階で、本格的な利益貢献はこれからです。
企業向けのケミカルは欧州の需要減や在庫評価減で減益。景気に振られる事業の弱さが出ました。国内市場の縮小や競争も続きます。
出所:花王 2025年12月期 決算短信〔IFRS〕・決算説明会資料(2026/2/5)、各社報道。金額は概算を含みます。
会社予想は、さらなる増収増益。
会社が示す2026年12月期の見通しです。会社予想は「約束」ではなく「いまの計画値」ですが、経営の温度感が読めます。花王は引き続き増収増益と、37期目の増配を計画しています。
予想を読むうえでの3つの注記
① 増益の柱は化粧品の回復継続と日用品の値上げ・高付加価値化。原価低減(TCR)も引き続き効かせる計画です。
② 第1四半期(1〜3月)は最終利益が前年比+36%と好スタート。回復の流れは足元でも続いています。
③ ただし原材料・為替・中国市場・ケミカル市況は不確実。計画どおり利益を積み上げられるかは、これらの外部環境次第の面もあります。
年初に高値、その後はじり安。
2026年の株価は、好決算を受けて2月に年初来高値(6,792円)をつけたあと、5月にかけて5,800円台までじりじり下げ、足元で持ち直しています。指標もやさしく整理します。
株価の推移(2026年)
終値ベースの主要な節目・概算/単位:円この株は割安?割高? — 主要指標をやさしく
数字は「市場平均(東証プライムの概算)」と比べると意味が分かります。花王は市場平均より割高に見えますが、それはブランド力と連続増配が評価されているから(株価約6,240円で計算)。
1株が1年で生む利益。25.12期 約260円→26.12期予 約287円。回復で伸びる見込み。
1株あたりの純資産。株価(約6,240円)はこれを大きく上回る(=PBRが高い)。
利益の何年分か。市場平均(約16倍)より高め。割安ではない。
純資産の何倍か。1倍を大きく超える=市場が高く評価。理由は下記。
株主のお金をどれだけ増やしたか。8%超なら一般に良好。回復で改善中。
株価に対する年間配当の割合。市場平均(約2%台)並み。高利回り型ではない。
総資産のうち自前資本の割合。約半分超で、財務は非常に健全。
売上に対する営業利益の割合。回復してきたが、全盛期(10%超)にはやや届かず。
なぜPBR2倍超で評価されるのか
資源株のように純資産で評価される会社と違い、花王はPBR約2.6倍と純資産の2倍以上で取引されています。理由は、①アタック・ビオレなどの強いブランド、②不況に強い安定収益、③国内最長の連続増配という“質”。ただし、かつて市場の人気銘柄だった頃のPBR(4倍超)からは下がっており、いまは近年レンジの下のほう=回復への期待が試されている水準です。下のバーは過去のPBRの範囲と現在地のイメージです。
出所:IRBANK・各金融情報サイト(指標は2026年6月時点の概算、株価は遅延あり)。EPS/BPS/PER等は集計元・会計基準により表記が異なる場合があります。2026年7月1日付で1→2の株式分割を予定しており、分割後は1株あたりの数値が半分になります(当ページは分割前ベース)。
市場より「割高」。でも、それだけの理由がある。
指標は単体では意味を持ちません。日用品・化粧品の大手と市場全体(東証プライム)という2つの“ものさし”に当てると、花王の位置が見えてきます。
指標くらべ(自社/同業/市場)
バーの長さは水準のイメージ※ 日用品・化粧品大手=生活必需品系の大型銘柄の目安。市場平均=東証プライムの概算。集計元・時点で変動します。
読み解き① 高PBRには理由がある
花王は市場平均よりPBRもPERも高い=「割高」に見えます。でもそれは、強いブランド・安定収益・連続増配という“質の高さ”が評価されているから。生活必需品メーカーは、利益のブレが小さいぶん高めに評価されやすい傾向があります。
「安いから買う」ではなく「質が高いから持つ」タイプの銘柄です。
読み解き② ただし“元の評価”からは下がった
かつての花王はPBR4倍超で取引される市場の“優等生”でした。化粧品の不振や利益の伸び悩みで評価が下がり、いまは近年レンジの下のほう。
裏を返せば、化粧品とグローバルで稼ぐ力を取り戻せば、評価が戻る余地もある、ということ。回復ストーリーが効くかどうかが焦点です。
主要な指標を並べる(概算・市場データ)
同業の大型株と並べると、花王は「規模が大きく、評価も高め」の位置にあります。
| 会社(コード) | 時価総額 | 予想PER | PBR | 配当利回り |
|---|---|---|---|---|
| 花王4452 | 約2.9兆円 | 約22倍 | 約2.6倍 | 約2.5% |
| ユニ・チャーム8113 | 約3兆円 | 約24倍 | 約3.4倍 | 約1.3% |
| ライオン4912 | 約0.4兆円 | 約16倍 | 約1.4倍 | 約2.4% |
| 資生堂4911 | 約1.2兆円 | 高め(回復途上) | 約2倍 | 約1.5% |
花王は連続増配という独自の看板で配当利回りは同業よりやや高め。一方、成長期待の強いユニ・チャームはPBRがさらに高い、といった違いがあります(数字は概算)。
専門家の総意は「買い」。回復に前向き。
証券会社のアナリストは、各社が独自に1年後の「目標株価」と投資判断(レーティング)を出します。花王のコンセンサスは「買い」寄りで、回復の継続を評価する見方が優勢です。
投資判断(レーティング)の内訳
コンセンサスは「買い」。買い優勢で売りはなし。★★★★☆ 前後。
※ 一例として「強気・買い9:中立4:売り0」程度の構成(みんかぶ、2026年5月時点)。買いが過半で、売り推奨は出ていません。
目標株価(1年後予想)
平均目標株価はおよそ7,372円で、直近株価(約6,240円)より2割ほど上。化粧品とグローバルの回復が続く前提です。一方で「回復が想定より遅れれば上値は重い」という慎重な見方も併存します。
市場の関心はシンプルです——「化粧品とグローバルで、稼ぐ力をどこまで取り戻せるか」。連続増配の安心感はあっても、株価がさらに上がるには“利益が全盛期に近づく証明”が要ります。
出所:みんかぶ・各証券レーティング報道等(2026年5〜6月時点の概算)。目標株価・判断は各社・時点で異なります。
指数にも連続増配ファンドにも、定番で入る。
時価総額が大きく、日本を代表する大型株なので、主要なインデックスにはほぼ確実に組み入れられます。さらに連続増配・累進配当をテーマにしたファンドの常連でもあります。
パッシブインデックス投信・ETF
指数に採用 → 連動ファンドが自動的に保有
- 日経平均株価(225)日経225連動型のETF・投信が保有。日本を代表する大型株の一つ。
- TOPIX(東証株価指数)時価総額が大きいため上位構成。TOPIX連動型の定番。
- JPX日経インデックス400ROE・収益性・ガバナンス等で選ぶ“質”の指数にも採用。
時価総額が大きいほど、インデックスの中での比率も大きくなります。花王は日本株インデックスの常連構成銘柄。指数に資金が向かえば、花王にも自動的に買いが入ります。
アクティブ増配・クオリティ系ファンド
連続増配・安定成長を狙う投信の定番
- 連続増配・累進配当ファンド国内最長の連続増配銘柄として、増配をテーマにしたファンドの組入上位の常連。
- クオリティ・生活必需品系ファンド強いブランドと安定収益で、“質の高い会社”を選ぶファンドに好まれる。
- ESG・長期保有系ファンド環境配慮の取り組みや安定経営が評価され、長期運用のファンドにも入りやすい。
出所:各指数の構成銘柄、運用会社の交付目論見書・マンスリーレポート等。保有比率は時点で変動します。
国内では「増配の代表格」。
海外は「ブランドは好き、回復力を見る」。
花王は連続増配で個人に根強い人気がある一方、海外の機関投資家はブランド力を評価しつつ、化粧品や中国市場の構造課題を冷静に見ています。両者の目線を並べます。
国内の個人投資家
- +国内最長の連続増配(36期)。「毎年増配してくれる安心感」で、長期保有・配当再投資の定番銘柄。
- +身近な製品の安心感。アタックやビオレなど“知っている会社”で、はじめての株として選ばれやすい。
- ±配当利回りは約2.5%と地味。高利回り狙いには物足りず、「増配の継続」に価値を見いだす人向け。
- -ここ数年は株価が伸び悩み。「優良株のはずなのに上がらない」という不満の声も一定数ある。
海外の機関投資家
- +強いブランドと安定したキャッシュ創出を評価。ディフェンシブな日本株として一定の保有がある。
- +化粧品の黒字転換とROEの改善は前向きな材料。回復が本物なら見直し余地と見る向きも。
- -化粧品・中国市場の構造課題と、利益が全盛期に戻りきらない点を警戒。「回復を確認してから」という慎重姿勢。
- ±外国人の保有比率は約4割と高め。グローバルな評価が株価に影響しやすい構造です。
株主の内訳(概算イメージ)
大株主(筆頭)
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)約19%
- 以下:日本カストディ銀行・海外機関 等—
筆頭は信託銀行の信託口で、これは多くの投資家の“預かり口”。実質の保有は外国人が約4割と高く、国内機関・個人が続きます(数字は概算・時点で変動)。
財務と効率の素顔
安定キャッシュに支えられた「健全な」バランスシート(25.12期・概算)。
- ROE(自己資本利益率)実績/予想約11% / 約12%
- 営業利益率約9.7%
- 自己資本比率約57%
- 当期利益(株主帰属)1,201億円
- 売上収益1.69兆円
ROEは回復で10%台に戻り、自己資本比率は約57%と非常に健全。借入に頼らず、日用品の安定キャッシュが連続増配を支える——財務の堅さが花王の地力です。
出所:花王 有価証券報告書・IR資料、各金融情報サイト。株主構成・保有比率は概算で、最新の開示をご確認ください。
35年以上、増配を止めなかった。
これが日本記録です。
花王を語るうえで外せないのが、連続増配。1株あたりの配当を30年以上、毎年欠かさず増やし続けてきました。その期数は36期連続(2026年予想で37期目)と、日本の上場企業で最長。これが花王の“顔”です。
花王はおよそ1990年代初めから一度も減配せず、毎年増配を続けてきました。利益が大きく落ち込んだ年も例外ではありません。1株配当は近年も150円→152円→154円→156円(予)と、着実に上向いています。
象徴的なのが2023年。化粧品不振などで1株利益が約94円まで急減し、配当(150円)が利益を上回る状態(配当性向150%超)になっても、それでも増配を死守しました。「何があっても増やし続ける」——この一貫した姿勢が、花王を“連続増配の代名詞”にしています。
メリット連続増配の強み
- 国内最長の実績:30年以上・36期連続の増配は日本記録。長期保有の安心感が圧倒的。
- 強いブランド:アタック・ビオレなど生活必需品で、不況でも需要が崩れにくい。
- 健全な財務:自己資本比率約57%。借入に頼らず、安定キャッシュで増配を支える。
- 買いやすさへ前進:2026年7月に1→2の株式分割。1株が約半額になり個人が持ちやすく。
留意点増配ゆえの宿題
- 利回りは地味:株価が高めで、配当利回りは約2.5%。高利回り狙いには物足りない。
- 利益は回復途上:全盛期の利益水準に未達。増配の“伸び幅”は小さくなりがち。
- 化粧品・中国の課題:稼ぐ力の本格回復はこれから。ここが崩れると増配の余力に影響。
- 連続記録のプレッシャー:記録を守るために、無理な増配を続けるのではという見方も。
各社には“顔”がある
INPEXの黄金株、JTの政府保有、三菱商事のバフェット、MUFGのモルガン・スタンレー、NTT・KDDIの連続増配のように、各社にはその会社を象徴する“顔”があります。花王の顔は、国内最長(36期連続)の増配。NTTやKDDIの連続増配が10〜20期級なのに対し、花王は36期と“年数”が桁違い。派手な成長ではなく、「何があっても増配を止めない」一貫性で存在感を示すタイプです。
原材料・中国・為替・人口減。
大きな波は、花王にどう効くか。
身近な日用品の会社ですが、業績はさまざまなマクロ要因に左右されます。追い風と逆風を整理します。
原材料・原油高
逆風(コスト増)洗剤や化粧品の原料は油脂・化学品が多く、原油や原料市況の上昇はコスト増の逆風。25年も約85億円の減益要因でした。
花王は値上げ(高付加価値化)と原価低減(TCR)でこれを吸収するのが基本戦略です。
中国市場・化粧品
両面(回復のカギ)化粧品やスキンケアは中国市場の影響が大きい。景気・消費の冷え込みやインバウンドの増減が、業績を左右します。
足元は中国の持ち直しが化粧品の黒字化を後押し。ここが本格回復すれば全体の利益を押し上げます。
為替(円安・円高)
両面海外売上が全体の約4割あり、円安だと海外の利益が円換算で膨らみます。輸入原料のコストは円安で増える面も。
為替はプラス・マイナス両面に効くため、全体への影響は事業構成しだいです。
国内人口減・節約志向
構造的な逆風国内市場は人口減で長期的に縮小傾向。生活防衛の節約志向は、安い製品への流れを生みます。
だからこそ高付加価値品とグローバル展開が重要。海外でどれだけ伸ばせるかが、長期の成長を決めます。
出所:各種報道・会社資料等(2026年6月時点)。マクロの影響は不確実性が高く、方向感を示すものです。
「回復」から「再成長」へ戻れるか。
花王の長期は、稼ぐ力をどこまで取り戻し、海外で伸ばせるかの勝負です。近い将来は会社の中期計画、20年後は公表目標のない見立てとして、区別して読んでください。
- 当期利益1,201億円へV字回復(25.12期)
- 化粧品が黒字転換
- 連続増配36期・財務は健全
- 化粧品の収益改善とグローバル展開
- 高付加価値化と原価低減(TCR)の継続
- ROEの改善を重要目標に
- 国内の安定を土台に海外で成長
- 全盛期の利益水準を超えられるかが焦点
- サステナビリティ(環境配慮)も競争力に
- 国内人口減を海外と高付加価値で補えるか
- 化粧品・ヘルスケアで世界に伍せるか
- リスク:回復しきれず“安定だが伸びない優良株”のまま
中期計画(K27)までは会社の方向性に沿っていますが、達成は環境次第で保証されません。10〜20年後は不確実性が大きく、ここでの記述は一つのシナリオです。長期見通しほど幅をもって捉えるのが安全です。
連続増配こそ、花王の“軸”。
花王は利益が落ち込んだ年も、配当を着実に増やしてきました。利回りは派手ではありませんが、「増配を止めない」一貫性こそが株主還元の核です。
1株配当は148円→150円→152円→154円→156円(予)と、毎年のように増えてきました。2023年に利益が急減しても増配を続けたのが花王の真骨頂で、配当性向が一時150%超になっても記録を守りました。
2026年7月1日付で1→2の株式分割を予定。1株が約半額になり、個人が買いやすくなります(連続増配の年数や配当の総額は分割後も変わりません)。「増配+買いやすさ」で個人に開いていく方針です。
※ 配当・株式分割は会社の方針で、将来変わる可能性があります。連続増配は「過去の実績」であり、今後を保証するものではありません。配当利回りは株価により変動します。
出所:花王 株主還元方針・2025年12月期 決算短信・決算説明会資料(2026/2/5)。配当性向・利回りは予想EPS・株価からの概算です。
優良株にも、見ておくべき4つの論点。
安定して見える花王にも、弱点はあります。良い面だけでなく、ここを併せて見るのが大切です。
化粧品・中国市場の不確実性
黒字化はしたものの、化粧品の本格回復はこれから。中国の景気やインバウンド次第で、回復が遅れる可能性があります。会社全体の利益を左右する最大の変数です。
原材料高・コスト圧力
洗剤・化粧品の原料は油脂や化学品が中心で、原油・原料市況の上昇はコスト増の逆風。値上げや原価低減で吸収できない局面では、利益が圧迫されます。
国内市場の縮小と競争
国内は人口減で長期的に縮小傾向。節約志向で安い製品への流れもあり、日用品は競争が激しい。海外で伸ばせなければ、成長は頭打ちになりやすい。
利益回復の遅れと評価の調整
利益はまだ全盛期に届かず、PBRもかつての4倍超から低下。回復が想定より遅れれば、「安定だが伸びない」と見られ、株価の上値が重くなるリスクがあります。
花王は「成長株」というより「連続増配の安定株」として見るのが素直です。大きく増やすより、増配を受け取りながら回復を待つ——その性格を理解して持つのが近道です。
このページの要点。
正体:花王はアタック・メリーズ・ビオレなどを擁する日本最大級の日用品メーカー。化粧品(カネボウ等)や化学品(ケミカル)も手がける。最大の顔は国内最長(36期連続)の増配。
決算:25.12期は売上収益1.69兆円・当期利益1,201億円(+11.4%)。化粧品が黒字転換し、2023年の利益急減(439億円)から構造改革でV字回復。ただし2019年のピーク(約1,480億円)にはまだ未達。
指標:PER約22倍・PBR約2.6倍・利回り約2.5%。市場平均より割高だが、ブランド・安定収益・連続増配という“質”が評価。かつての高評価(PBR4倍超)からは下がり、回復が試される水準。
還元:連続増配が軸。利益が急減した2023年も増配を死守し、配当性向150%超でも記録を守った。利回りは地味だが一貫性が魅力。2026年7月に1→2の株式分割を予定。
評価・未来:アナリストは買い寄り(平均目標約7,372円)。逆風は化粧品・中国・原材料高・国内縮小、強みはブランド・健全な財務・国内最長の連続増配。安定と回復途上が同居する銘柄。