一覧 NTT入門 9432 / 東証P
総合解説・ゼロから読む

「電話の会社」では、
もう古い。
NTTとは何者か。

NTT(証券コード 9432)は、日本最大の通信グループ。ドコモや固定電話だけでなく、データセンター・グローバルIT・不動産まで手がけます。2023年の株式分割で1株が約150円になり、個人にいちばん持たれる“国民株”に。連続増配でも知られます。むずかしく感じても大丈夫、順番にほどいていきます。

総合ICT(ドコモ)
グローバル
地域通信
データセンター
IOWN・光技術
金融(住信SBI)
不動産
電力・再エネ
システム開発
時価総額
約13.0兆円
営業収益(26.3期)
14.4兆円
純利益(26.3期)
約1.04兆円
予想配当利回り
約3.7%

数値の基準時点:決算=2026年3月期(2026/5/8発表・IFRS)/ 株価・指標=2026年6月下旬時点の概算。出所:NTT 決算短信〔IFRS〕・IR資料、IRBANK、各証券・金融情報サイト。数値は変動するため最新の一次情報をご確認ください。

いそがしい人へ
  • 01NTTは日本最大の通信グループ。ドコモ+固定+グローバルIT。2023年の25分割で1株約150円になり、NISAで個人にいちばん買われる株に。
  • 0226.3期は営業収益14.4兆円と過去最高。ただし純利益は約1.04兆円で横ばい〜微減、27.3期は減益見通し。利益の伸びは一服しています。
  • 03それでも連続増配(年5.4円予想)+自社株買いで還元は厚い。利回り約3.7%。「成長より安定配当」の代表格と覚えればOK。
01 / そもそも何の会社?

「電話会社」から、
日本最大の「情報インフラ」へ。

NTTのはじまりは、国の電話事業を引き継いだ会社です。そこから40年、携帯(ドコモ)・インターネット・データセンター・海外ITへと広がりました。いまは“電話の会社”というより、日本の通信と情報を支える土台そのものです。

覚えておくと早いのは、NTTが持株会社だということ。ドコモ・コミュニケーションズ・データ・グローバルなど、性格の違う会社を束ねるグループの「親」です。

1985

民営化でスタート

日本電信電話公社(電電公社)が民営化され、NTTが誕生。国の電話網をそのまま引き継ぎました。

1990s〜

持株会社へ再編

1999年に持株会社体制へ。地域通信(東日本・西日本)、長距離・国際(コミュニケーションズ)、データなどに分社しました。

2000s〜

ドコモの時代

携帯電話のNTTドコモが急成長し、グループの稼ぎ頭に。固定電話の減少を移動通信が補いました。

2020

ドコモを完全子会社化

NTTがドコモを約4.3兆円で完全子会社化。料金値下げ局面で、グループ一体での効率化を進めました。

2023

株式を25分割

1株を25株に分割し、1株が約150円に。少額で買えるようになり、個人投資家が一気に増えました。

今後

IOWN(アイオン)へ

光を使った次世代基盤IOWNと、AI向けデータセンターに投資。「電話会社」から「情報インフラ会社」への作り替えが進みます。

02 / どうやって稼ぐ?

4つの事業で稼ぐ。主役はやっぱりドコモ。

NTTの決算は大きく4つに分かれます。利益のいちばんの柱は携帯のドコモ(総合ICT)。最近は海外IT(グローバル)が伸び、固定の地域通信が安定を支える——この組み合わせです。

総合ICT(NTTドコモ)

携帯・スマホ、d払いやdポイントなどの金融・決済も。グループ最大の利益の柱ですが、料金競争の影響も受けます。

グローバル・ソリューション

海外の企業向けIT・クラウド・データセンター(NTTデータ等)。直近の利益成長を牽引する“成長エンジン”です。

地域通信

NTT東日本・西日本の固定回線・光ファイバー。じわじわ縮むものの、毎月積み上がる安定収益の土台です。

不動産・エネルギー・その他

都市開発(NTT都市開発)、再生可能エネルギー、システム開発など。2026年3月期からは住信SBIネット銀行も連結に加わりました。

※ セグメント名や区分は会社の開示に基づく整理です。金融(住信SBIネット銀行)の連結化など、構成は年により変わります。

03 / 事業の割合と性格

どこで稼ぎ、どこが伸びているか。

利益の構成を見ると、ドコモ中心の主力に、海外のグローバルが成長で食い込んできた構図が分かります。安定・成長・主力の3つに束ねて整理します。

セグメント営業利益の構成

2026年3月期/セグメント営業利益の概算イメージ・億円
総合ICT(ドコモ等) 53% グローバル・ソリューション 28% 地域通信 16% 不動産・エネルギー・他 3%
安定収益(地域通信)成長領域(グローバル)主力事業(ICT・その他)

※ あくまで概算イメージです。総合ICT(ドコモ)が最大の柱ですが、26.3期は料金影響などで前期比マイナス。代わりにグローバルが大きく伸びて全体を支えました

3つの役割で読み解く

同じ「稼ぎ」でも、景気や競争への強さが違います。3分類で見ると、NTTが“ディフェンシブ(守りに強い)”と言われる理由が見えてきます。

安定

ディフェンシブ
土台の固定収益
地域通信光ファイバー

毎月の通信料が積み上がるストック型。景気が悪くてもスマホや回線は止めにくく、収益が崩れにくいのが強みです。

成長

伸びしろ
利益を伸ばすエンジン
グローバルデータセンターIOWN

海外IT・クラウド・AI向けデータセンター。世界のデジタル投資を取り込み、直近の利益成長を引っ張ります。投資先行で振れもあります。

主力

競争にさらされる
稼ぎ頭ドコモ
携帯d払い・dポイント

グループ最大の利益源ですが、料金値下げ競争や乗り換えの影響を受けます。金融・ポイントで顧客をつなぎ留める戦略です。

いまの立ち位置

安定はあるが、成長は“次の一手”待ち

固定とドコモで安定した土台はあります。ただ、料金競争でドコモの利益が伸び悩むなか、次の成長はグローバルとIOWN・データセンターに懸かっています

大きな投資が先に出るため、利益が一段と伸びるには時間がかかる——これがいまのNTTの宿題です。

出所:NTT 2026年3月期 決算説明会資料・各社報道。構成比は営業利益の概算で、区分・金額は変動します。

04 / 最新決算を読む

増収だけど、利益は“足踏み”。

2026年5月8日発表の通期決算(2026年3月期)です。売上は過去最高を更新しましたが、利益はほぼ横ばい。良いところと、気になるところを分けて見ます。

営業収益(売上)
14.4兆円
+5.1% 前期比
営業利益
1.71兆円
+3.4% 前期比
純利益(株主帰属)
約1.04兆円
+3.7% 前期比

純利益の推移と来期予想

単位:億円 / 株主に帰属する当期利益
0 3,500 7,000 10,500 14,000 12,131 23.3 12,795 24.3 10,000 25.3 10,370 26.3 9,800 27.3 会社予想
実績会社予想(27.3期)

24.3期の約1.28兆円をピークに、純利益は1兆円前後で足踏み。26.3期は約1兆370億円で前期比は微増、27.3期は会社が減益を見込みます

良いところ

海外IT(グローバル)が伸びた

グローバル事業の営業利益は前期比で大きく増加。世界のデジタル投資・データセンター需要を取り込み、ドコモの伸び悩みを補いました。

売上は5年連続の増収で、過去最高を更新しています。

気になるところ

本業ドコモの足踏みと、財務の変化

稼ぎ頭の総合ICT(ドコモ)は料金競争などで減益。グループ全体の純利益も伸び悩みました。

また住信SBIネット銀行を連結化した影響などで、自己資本比率は前期の約34%から約21%へ低下。銀行を抱えると数字の見え方が変わる点に注意です。

出所:NTT 2026年3月期 決算短信〔IFRS〕・決算説明会資料(2026/5/8)、各社報道。金額は概算を含みます。

05 / 来期はどうなる?

会社予想は、やや慎重な減益。

会社が示す2027年3月期の見通しです。会社予想は「約束」ではなく「いまの計画値」ですが、経営の温度感が読めます。

会社予想 純利益(株主帰属)
約9,800 億円
27.3期予(前期比 約−5%)
約15.1 兆円
営業収益予(増収は継続)
減益でも増配は維持 / 1株配は5.4円へ増配予想

予想を読むうえでの3つの注記

① 減益見通しの背景は、ドコモの料金影響・コスト増・先行投資。売上は伸びても利益が付いてこない局面です。

IOWNやデータセンターへの大型投資が続きます。回収には時間がかかり、しばらくは「種まき」が利益を抑えます。

③ それでも連続増配と自社株買い(2,000億円枠)で株主還元は続ける方針。利益より「還元の安定」を重んじる姿勢です。

06 / 株価と「割安・割高」の指標

1株150円前後。年の前半は、じり安。

2026年の株価は、年初の161円台から6月にかけて142円台までじりじり下げました。利益の伸び悩みが嫌われた形です。指標もやさしく整理します。

株価の推移(2026年)

終値ベースの主要な節目/単位:円
140 146 152 158 164 161 1/6 155 3/13 150 4/30 148 5/8 144 6/19 143 6/23 144 6/26
株価決算発表(5/8)
直近の株価(6月下旬)
144円 前後
レンジ:142〜146円
年初来高値
161
2026/1/6
年初来安値
142.6
2026/6/26

この株は割安?割高? — 主要指標をやさしく

数字は「市場平均(東証プライムの概算)」と比べると意味が分かります。NTTは平均並み〜やや割安で、配当の厚みが魅力という位置づけです。

EPS1株あたり利益
約12.6

1株が1年で生む利益。株式分割後の水準。横ばい圏で推移。

BPS1株あたり純資産
約119

1株あたりの純資産。株価(約144円)はこれをやや上回る水準。

PER株価収益率
約12

利益の何年分か。市場平均(約15倍)より低めで、やや割安の目安。

PBR株価純資産倍率
約1.2

純資産の何倍か。市場平均(約1.4倍)よりやや低い。1倍は超えています。

ROE自己資本利益率
約10.7%

株主のお金をどれだけ増やしたか。8%超なら一般に良好。NTTは10%台。

配当利回り予想
約3.7%

株価に対する年間配当の割合。市場平均(約2%台)より高い高配当です。

自己資本比率
約20.8%

前期の約34%から低下。住信SBIネット銀行の連結などが影響。銀行を含むと低めに出ます。

株主数個人の多さ
約316万人

国内トップ級。株式分割で個人が一気に増え、“国民株”と呼ばれます。

注目点

PBRは1倍台。割安というより「適正圏」

オリックスやメガバンクのような「1倍割れからの再評価」物語とは違い、NTTのPBRはおおむね1.0〜1.7倍で推移してきました。いまは約1.2倍。割安というより妥当な水準で、配当の安定が買われるタイプです。

1.0倍
現在 約1.2倍
おおむね1.0〜1.7倍で推移

出所:IRBANK・各金融情報サイト(指標は2026年6月時点の概算、株価は遅延あり)。EPS/ROE/PER等は集計元により表記が異なる場合があります。株主数は直近開示の目安。

07 / 指標を他社・市場と比べる

通信3社の中では「安定の最大手」。

ライバルはKDDIとソフトバンク。NTTは規模が最大で、利回りは3社で見ると中位。利益の伸びより安定感が持ち味です。

指標くらべ(自社/市場)

バーの長さは水準のイメージ
PER(予)株価収益率(低いほど割安)
NTT
約12倍
通信他社
約14倍
市場平均
約15倍
PBR株価純資産倍率(低いほど割安)
NTT
約1.2倍
通信他社
約1.7倍
市場平均
約1.4倍
配当利回り予想(高いほど配当が厚い)
NTT
約3.7%
通信他社
約3.3%
市場平均
約2.2%
ROE自己資本利益率(高いほど効率的)
NTT
約10.7%
通信他社
約13%
市場平均
約9%

※ 通信他社=KDDI・ソフトバンク等の目安。市場平均=東証プライムの概算。集計元・時点で変動します。

通信大手を並べる(概算・市場データ)

規模はNTTが断トツ。利回りは3社とも高めで、似たような“高配当ディフェンシブ”として並びます。

会社(コード)時価総額予想PERPBR配当利回り
NTT9432 約13.0兆円約12倍約1.2倍約3.7%
KDDI9433 約11兆円約14倍約1.8倍約3.0%
ソフトバンク9434 約10兆円約16倍約4倍約3.7%

NTTは時価総額が最大でPBR・PERは最も控えめ。「いちばん大きくて、いちばん割安寄り」というのが、ざっくりした立ち位置です(数字は概算)。

08 / 市場・アナリストの評価

評価は「中立」がやや優勢。

アナリストは1年後の目標株価と投資判断を出します。NTTは利益の伸び悩みを反映してか、強気と中立が入り混じる評価です。

投資判断(レーティング)の内訳

コンセンサスは「中立〜やや買い」。★★★☆☆ 前後。

強気・買い
5
中立
6
弱気・売り
1

※ おおむね「強気5:中立6:弱気1」程度の構成(集計元・時点で変動)。決算後に一部が目標株価を引き下げました。

目標株価(1年後予想)

慎重派
150
平均(コンセンサス)
160 円台
強気派
180

平均目標株価はおよそ155〜165円で、直近株価(約144円)よりやや上。一方で「利益が伸びないと上値も重い」という慎重な見方も根強くあります。

市場の関心はシンプルです——「ドコモの利益が底打ちし、グローバルとIOWNが利益を押し上げられるか」。配当は安心でも、株価が上がるには“成長の証明”が要ります。

出所:みんかぶ・各証券レーティング報道等(2026年6月時点の概算)。目標株価・判断は各社・時点で異なります。

09 / 投資信託での採用状況

指数にも高配当投信にも、ほぼ必ず入る。

時価総額が国内トップ級なので、日本株のインデックスにはほぼ確実に組み入れられます。高配当・NISA向けの投信でも定番です。

トップ
日経平均・TOPIX・JPX日経400の主要3指数すべてで上位の構成銘柄。日本株のインデックス投信を持っていれば、あなたもほぼ必ずNTTを間接保有しています。

パッシブインデックス投信・ETF

指数に採用 → 連動ファンドが自動的に保有

  • 日経平均株価(225)値がさ調整後も主要構成銘柄。日経225連動のETF・投信が保有。
  • TOPIX(東証株価指数)時価総額が大きいため上位構成。TOPIX連動型の定番。
  • JPX日経インデックス400ROE・ガバナンス等で選ぶ“質”の指数にも採用。

時価総額が大きいほど、インデックスの中での比率も大きくなります。NTTは日本株インデックスの「重し」の一つ。指数が動けばNTTも動く、という関係です。

アクティブ高配当・NISA向けファンド

高配当・大型・安定を狙う投信の定番

  • 高配当株ファンド利回り約3.7%・大型で安定。日本の高配当株ファンドの王道的な組入候補。
  • 連続増配・累進配当系増配を続ける銘柄を集める投信で評価されやすい。
  • NISA向け・国民的銘柄1株約150円で買いやすく、新NISAの個人マネーの受け皿に。

出所:各指数の構成銘柄、運用会社の交付目論見書・マンスリーレポート等。保有比率は時点で変動します。

10 / 投資家からの評判

国内では「みんなが持つ安心株」。
海外では「成長の鈍さ」を見る。

NTTは国内の個人にとって“はじめての株”の定番。一方、海外の機関投資家は利益の伸び悩みを冷静に見ています。両者の目線を並べます。

国内の個人投資家

「身近で安心、配当が魅力」
  • 株主数は国内トップ級(約316万人)。株式分割で1株150円になり、新NISAの個人マネーが大量に流入。
  • 連続増配・大企業の安心感。「はじめての1株」「長期で持つ高配当株」として絶大な人気。
  • ±値動きは小さめ。大きく増えはしないが、大きく減りにくい。退屈だが安心、という評価。
  • ここ1〜2年は株価がじり安。「買ったのに下がった」という個人の声もあり、利益の伸びが課題。

海外の機関投資家

「安定は評価、成長は物足りない」
  • 巨大で潰れない安定感と高い配当。ディフェンシブな日本株として一定の組入れ対象。
  • グローバル事業の成長とIOWN・データセンターの将来性は注目材料。
  • 本業ドコモの利益の伸び悩みと料金規制を警戒。「成長が見えにくい」と割安に置かれがち。
  • ±政府が約1/3を保有(NTT法)。安定要因だが、規制・公共性が経営の自由度を縛る面も。

株主の内訳(概算イメージ)

政府 約1/3
個人 多数
金融機関ほか
外国人 約14%
政府(財務大臣)約35%(NTT法で1/3以上)個人(約316万人)金融機関・自己株等 約20%外国法人等 約14%

最大の特徴は政府がNTT法で約1/3以上を保有すること、そして個人株主が国内最多級であること。「国の会社」と「みんなの会社」の両面を持ちます。

財務と効率の素顔

巨大インフラを支える「重い」バランスシート(26.3期・概算)。

  • ROE(自己資本利益率)約10.7%
  • 営業利益率約12%
  • 自己資本比率約20.8%
  • 純利益(株主帰属)約1.04兆円
  • 営業収益14.4兆円

ROEは10%台で堅調。一方で自己資本比率は約21%と低め——巨大な設備と、今期から加わった銀行(住信SBI)が影響しています。設備投資の重さは通信会社の宿命です。

出所:NTT 有価証券報告書・IR資料、各金融情報サイト。株主構成・株主数は概算で、最新の開示をご確認ください。

11 / 連続増配という“顔”

株式を25分割して、「みんなの株」になった。

NTTを語るうえで外せないのが、連続増配2023年の株式分割。利益が派手に伸びなくても、配当を着実に増やし、買いやすくして個人を呼び込みました。これがNTTの“顔”です。

2023年7月、NTTは1株を25株に分割。それまで1株4,000円近かった株が、約150円で買えるようになりました。新NISAの追い風もあり、個人株主は一気に増えて国内トップ級に。

さらにNTTは長年にわたって配当を増やし続けてきました(連続増配)。1株配当は分割後の基準で着実に上向き、27.3期も増配を見込みます。利益が足踏みしても還元は止めない——この姿勢が「安心して持てる株」という評価をつくっています。

メリット“国民株”の強み

  • 買いやすさ:1株約150円で、少額・NISAで気軽に持てる。投資の入り口になりやすい。
  • 連続増配:配当を着実に増やす方針で、長期保有の安心感が大きい。
  • 分厚い個人株主:約316万人の個人が支え、株価の下値が比較的固い。
  • ディフェンシブ:通信は生活インフラ。景気が悪くても収益が崩れにくい。

留意点“国民株”ゆえの宿題

  • 利益の伸び悩み:還元は厚いが、肝心の利益が足踏み。株価が上がりにくい。
  • 規制・公共性:政府保有とNTT法、料金への目線など、経営の自由度に制約。
  • 低い自己資本比率:巨大投資と銀行連結で財務は“重い”。金利上昇に弱い面。
  • 期待先行のリスク:IOWN・データセンターは将来性だが、回収まで時間がかかる。
シリーズの中での位置づけ

各社には“顔”がある

INPEXの黄金株、JTの政府保有、三菱商事のバフェット、MUFGのモルガン・スタンレーのように、各社にはその会社を象徴する“顔”があります。NTTの顔は、連続増配と株式分割で「個人にいちばん開かれた株」になったこと。成長の派手さではなく、安定と裾野の広さで存在感を示すタイプです。

12 / マクロ環境との接点

AI・電力・金利・規制。
大きな波は、NTTにどう効くか。

通信インフラの巨人だけに、世界のテーマが様々な経路で効いてきます。追い風と逆風を整理します。

AI・データセンター

追い風/成長の本命

生成AIでデータセンター需要が急増。NTTは世界有数のデータセンター事業者で、グローバル成長の柱。

光技術IOWNで「電力を食わない高速通信」を狙う。AI時代の電力・通信ボトルネックを解く一手として期待。

金利

逆風

巨大な設備投資を借入や社債でまかなうため、金利上昇は調達コスト増の逆風。自己資本比率も低め。

日銀の正常化が進むほど、利払い負担に注意が必要です。

通信料金・規制

逆風(公共性)

携帯料金の引き下げ圧力や乗り換え促進は、ドコモの利益に逆風

政府保有・NTT法のもと、公共性と収益のバランスを常に問われます。

デジタル化・人口減

両面

社会のDX・キャッシュレス・スマートシティは追い風。生活のあらゆる場面に通信が入り込みます。

一方、国内人口減は固定回線や国内市場の縮小要因。だからこそ海外(グローバル)が重要に。

出所:各種報道・会社資料等(2026年6月時点)。マクロの影響は不確実性が高く、方向感を示すものです。

13 / 5年・10年・20年の立ち位置

「電話会社」から「情報インフラ会社」へ。

NTTが描く長期の方向性です。近い将来は会社の計画20年後は公表目標のない見立てとして、区別して読んでください。

いま / 2026
通信の巨人
現在地
実績
  • 営業収益14.4兆円(過去最高)
  • 純利益は約1.04兆円で足踏み
  • 連続増配・国民株として個人に浸透
〜5年 / 2030
成長の作り替え
中期計画
会社方針
  • グローバル・データセンターを利益の柱に育てる
  • IOWNの商用化を本格化
  • ドコモの料金・コスト構造を立て直す
〜10年 / 2035
情報インフラ企業
長期ビジョン
会社ビジョン
  • 「電話」よりデータ・AI・電力を運ぶ会社へ
  • IOWNで省電力の次世代通信網を世界へ
  • 安定配当を続けながら成長投資を回収
〜20年 / 2045
分岐点
構造シナリオ(推定)
見立て
  • IOWNが普及すれば世界の通信基盤の一角
  • 国内は人口減、成長は海外とデジタル基盤次第
  • リスク:投資が実らず“高配当だが伸びない巨人”のまま

近い将来は会社の方向性に沿っていますが、達成は環境次第で保証されません。20年後は不確実性が大きく、ここでの記述は一つのシナリオです。

14 / 配当・株主還元

連続増配+自社株買い。還元はNTTの“軸”。

NTTは利益が足踏みしても、配当を着実に増やしてきました。自社株買いも組み合わせ、株主還元を経営の中心に据えています。

27.3期 予想配当
5.4
前期5.3円から連続増配
配当性向
約45%
利益の半分弱を配当に
予想配当利回り
約3.7%
市場平均(約2%台)より高い

1株配当は分割後の基準で4.6円→4.8円→5.1円→5.2円→5.3円→5.4円(予)と、毎年のように増えてきました。利益が伸び悩んだ年も減配せず増配を続けたのがNTTの特徴です。

あわせて2,000億円規模の自社株買い枠を設定。発行済株式を減らしてEPS(1株利益)を支え、配当と合わせた総還元を厚くする狙いです。

※ 配当・自社株買いは会社の方針で、将来変わる可能性があります。連続増配は「過去の実績」であり、今後を保証するものではありません。

出所:NTT 2026年3月期 決算短信・配当方針(2026/5/8)。配当性向・利回りは予想EPS・株価からの概算です。

15 / リスクと注意点

安定株にも、見ておくべき4つの論点。

ディフェンシブで安心と言われるNTTにも、弱点はあります。良い面だけでなく、ここを併せて見るのが大切です。

01

利益成長の鈍化

売上は伸びても純利益は足踏み。本業ドコモが料金競争で伸び悩み、27.3期は減益見通し。配当は安心でも、株価の上値は重くなりがち。

02

低い自己資本比率と金利

巨大な設備投資を借入で支え、銀行(住信SBI)も連結。自己資本比率は約21%と低め。金利が上がると利払い負担が増える。

03

規制・公共性のしばり

政府が約1/3を保有(NTT法)。携帯料金の引き下げ圧力や公共性への配慮など、純粋な利益追求がしにくい面がある。

04

大型投資の回収リスク

IOWNやデータセンターへの先行投資は将来性がある一方、回収に時間がかかる。普及が遅れれば“種まきだけ”に終わるリスクも。

NTTは「成長株」ではなく「安定配当株」として見るのが素直です。大きく増やすより、減らさず配当を受け取る——その性格を理解して持つのが近道です。

/ 3行でまとめると

このページの要点。

正体:NTTは日本最大の通信グループ。ドコモ(総合ICT)を柱に、海外IT(グローバル)・地域通信・データセンターまで。電話会社から“情報インフラ会社”へ作り替え中。

決算:26.3期は営業収益14.4兆円と過去最高だが、純利益は約1.04兆円で足踏み。27.3期は減益見通しで、利益の伸びは一服している。

指標:PER約12倍・PBR約1.2倍・利回り約3.7%。市場平均よりやや割安で、配当の厚みが魅力。1倍割れからの再評価型ではなく“適正圏の高配当株”。

評判:2023年の株式分割(25分割)と連続増配で、個人株主は約316万人と国内トップ級。政府がNTT法で約1/3を保有する「国の会社」でもある。

未来:成長の鍵はグローバル・データセンター・IOWN。還元(連続増配+自社株買い)は厚いが、株価が上がるには“利益成長の証明”が要る。