「損害保険」だけの
会社ではない。
東京海上とは何者か。
東京海上ホールディングス(証券コード 8766)は、日本最大の保険グループ。1879年創業の日本初の保険会社を源流に、国内損保・国内生保に加え、北米を中心とした海外保険を大きく育ててきました。累進配当を続ける高配当株としても知られます。むずかしく感じても大丈夫、順番にほどいていきます。
数値の基準時点:決算=2026年3月期(2026/5/20発表・日本基準)/ 株価・指標=2026年6月下旬時点(株価約6,900円)。27.3期の会社予想はIFRS基準です。出所:東京海上HD 決算短信・決算説明会資料・IR資料、IRBANK、各証券・金融情報サイト。数値は変動するため最新の一次情報をご確認ください。
- 01東京海上は日本最大の保険グループ。国内損保(東京海上日動)を軸に、北米中心の海外保険と国内生保を束ねます。利益の約4割を海外が稼ぐグローバル企業です。
- 0226.3期の純利益は日本基準で9,804億円。ただし27.3期からIFRSへ移行し、政策保有株の売却益が純利益に乗らなくなるため、見かけの数字が大きく変わる点に注意。
- 03それでも7期連続増配(27.3期予 245円)+4,000億円規模の自社株買いで還元は厚い。利回り約3.5%。「累進配当の優等生」と覚えればOK。
日本で最初の保険会社が、
世界で稼ぐグループになった。
東京海上のはじまりは、1879年に生まれた日本初の保険会社です。船と荷物を守る海上保険からスタートし、自動車・火災・生命へと広げ、いまは北米を中心とした海外保険まで持つ巨大グループに。名前は知っていても中身は知らない——そんなあなたへ、順番にほどいていきます。
覚えておくと早いのは、東京海上HDが持株会社だということ。中核の東京海上日動火災保険を筆頭に、生命保険や、買収した海外の保険会社を束ねるグループの「親」です。
日本初の保険会社として創業
東京海上保険会社が設立。三菱の岩崎家などが関わり、船の荷物を守る海上保険から事業を始めました。日本の保険の歴史そのものです。
損害保険の総合会社へ
海上保険から、火災・自動車・賠償責任などあらゆる損害保険へ拡大。戦後は経済成長とともに、国内最大級の損保へと育ちました。
持株会社体制へ
持株会社(ミレアホールディングス、のちの東京海上HD)を設立。2004年には中核2社が合併し、東京海上日動火災保険が発足しました。
海外M&Aを本格化
米保険会社フィラデルフィアを約47億ドルで買収。ここから「海外保険を買って成長する」路線が鮮明になります。
米国で大型買収を連発
デルファイ(2012)・HCC(2015・約75億ドル)・ピュア(2020)を取り込み、北米が利益の柱に。海外保険がグループ成長の中心になりました。
政策株ゼロ+IFRSへ
政策保有株を2030年3月末までにゼロにし、資本効率を高める方針。27.3期からは会計をIFRS(国際基準)へ移行します。
保険料で稼ぎ、預かったお金を運用する。
保険の稼ぎ方はシンプル。大勢から保険料を集め、事故や災害が起きた人に保険金を払い、その差で利益を出す(保険引受益)。さらに、預かった保険料を運用して増やす(運用益)。東京海上はこれを、国内損保・海外保険・国内生保の3本柱で回しています。
国内損害保険(東京海上日動)|中核
自動車・火災・賠償責任など。国内最大級の損保で、グループ最大の収益基盤。景気より自然災害の影響を受けやすいのが特徴です。
海外保険(北米中心)|成長エンジン
米国のフィラデルフィア・デルファイ・HCC・ピュアなどを買収して拡大。利益の柱の一つで、グループの成長を引っ張ります。
国内生命保険(あんしん生命)
医療・がん・死亡保障など。損保と並ぶ国内のもう一つの柱ですが、会計上の都合で年により利益が大きく振れます。
金融・資産運用・その他
保険料として預かった巨額の資金を運用。金利が上がると運用益が増えるため、金利上昇は追い風になります。
※ 損保の利益は大きく「保険引受の利益(保険料−保険金・経費)」と「資産運用の利益」に分かれます。自然災害が多い年は引受が悪化し、株高・金利高の年は運用が良くなる——この2つで業績が動く点が、保険会社を理解する最大のカギです。
どこで稼ぎ、どこが伸びているか。
利益の構成を見ると、国内損保という大きな土台に、北米中心の海外保険が成長で食い込んできた構図が分かります。安定・成長・多様化の3つに束ねて整理します。
事業別の利益構成(概算)
2026年3月期/事業別の経常利益の概算イメージ・億円※ あくまで概算イメージ(事業別の経常利益ベース)です。国内損保が最大の柱ですが、海外保険(北米中心)が利益の約4割を稼ぐまでに成長しました。なお26.3期の国内生保は会計上の要因で一時的に小さく出ています。
3つの役割で読み解く
同じ「保険の稼ぎ」でも、性格はバラバラです。3分類で見ると、東京海上が“ディフェンシブ(守りに強い)だが、成長もある”と言われる理由が見えてきます。
国内損保
ディフェンシブ景気が悪くても自動車保険や火災保険は止めにくく、毎年積み上がる安定収益。ただし台風・地震などの大災害が出た年は利益が振れます。
海外保険
成長エンジン米国を中心に、買収で規模を広げてきた成長の柱。世界の保険料率や災害、為替の影響を受けつつ、グループの利益を押し上げます。
生保・運用
収益の多様化医療・がん・死亡保障の生命保険と、預かった資金の運用。損保とは違う収益源で全体を分散。金利上昇は運用益の追い風です。
国内で守り、海外で攻める
国内損保という分厚い土台の上に、北米の海外保険が成長を上乗せする形。さらに金利上昇で運用益も改善し、収益の柱が増えています。
一方で、巨大災害が出れば国内も海外も同時に痛むのが保険会社の宿命。再保険でリスクを分散しますが、振れは完全には消せません。
出所:東京海上HD 2026年3月期 決算説明会資料・各社報道。構成比は事業別利益の概算で、区分・金額は年により変動します。
増収。利益は“会計基準”で見え方が割れる。
2026年5月20日発表の通期決算(2026年3月期)です。売上にあたる経常収益は増えました。ただし純利益は「日本基準」と「IFRS(国際基準)」で大きく数字が違う——ここが今回いちばんの読みどころです。
純利益の推移と来期予想
単位:億円 / 親会社株主に帰属する当期純利益(23.3〜26.3期は日本基準、27.3期予はIFRS)25.3期の約1兆552億円は政策保有株の売却益で膨らんだピーク。26.3期は9,804億円(日本基準)。27.3期予の8,300億円はIFRS基準のため、日本基準比では減って見えますが、IFRS同士なら前期比+56%です。
海外保険と運用が伸びた
本業の実力を示す海外保険(北米中心)が増益。さらに金利・株高で資産運用も好調でした。政策株売却益を除いた“地力”の利益は伸びています。
だからこそ会計をIFRSで見ると、純利益は5,312億円と前期比+17.9%の増益になります。
自然災害と、基準変更の分かりにくさ
米ロサンゼルスの山火事など自然災害が国内損保・海外保険の利益を圧迫。災害は毎年読みにくく、利益を振らせます。
加えて27.3期からIFRSへ移行。日本基準では純利益に含めていた政策株の売却益などがIFRSでは外れ、同じ会社でも数字の見え方が変わる点に注意が必要です。
出所:東京海上HD 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕・決算説明会資料(2026/5/20)、各社報道。IFRSの純利益は会社開示の参考値(移行関連)。金額は概算を含みます。
会社予想は、IFRSで純利益8,300億円。
会社が示す2027年3月期の見通しです。27.3期からはIFRSで作成されるため、過去の日本基準の数字とは単純に比べられません。読み方の“ものさし”をそろえて見ます。
予想を読むうえでの3つの注記
① 「日本基準比で15%減」という見出しに注意。これは基準が違う数字を引き算した見かけ。IFRS同士なら前期比+56%の増益計画です。ものさしをそろえて比べるのが鉄則。
② 保険会社の予想には自然災害の前提が織り込まれます。台風・地震・海外の大災害が想定を超えれば、利益は下振れし得ます。
③ 還元は累進配当(減配しにくい)+自社株買いを継続。利益のブレに対し、配当の安定を重んじる姿勢です。
1月に急落、5月に最高値、その後反落。
2026年の株価は荒い値動きでした。1月の業績下方修正で年初来安値5,529円へ急落、その後回復し、5月の本決算で年初来高値8,038円。直近は6,900円前後に落ち着いています。指標もやさしく整理します。
株価の推移(2026年)
終値ベースの主要な節目/単位:円この株は割安?割高? — 主要指標をやさしく
数字は「市場平均(東証プライムの概算)」と比べると意味が分かります。東京海上は平均並み〜やや割高で、配当の厚みと安定が魅力という位置づけです(株価約6,900円で計算)。
1株が1年で生む利益。27.3期予(IFRS)。日本基準の26.3期実績は約516円で、基準により変わります。
1株あたりの純資産。株価(約6,900円)はこれを上回る水準(PBR1倍超)。
利益の何年分か。市場平均(約15倍)並み。保険株としてはやや高めです。
純資産の何倍か。市場平均(約1.4倍)よりやや高い。1倍を一貫して超えています。
株主のお金をどれだけ増やしたか。26.3期・日本基準ベース。IFRS基準では1桁台に見えます。
株価に対する年間配当の割合。市場平均(約2%台)より高い高配当です。
保険会社としては標準的。健全性は別の指標(ESR=ソルベンシー)で管理されます。
大型の保険株として個人にも広く保有されています。
PBRは一貫して1倍超。再評価の優等生
メガバンクのような「1倍割れからの復活」物語とは違い、東京海上のPBRはずっと1倍を超えてきました。累進配当・自社株買い・政策株売却といった株主重視の姿勢が評価され、近年は1倍台後半まで切り上がっています。割安というより質を買われるタイプです。
出所:IRBANK・各金融情報サイト(指標は2026年6月時点の概算、株価は遅延あり)。EPS/PER/ROE等は会計基準・集計元により表記が異なる場合があります。株主数は直近開示の目安。
3メガ損保の最大手。
規模と海外で一歩リード。
ライバルはMS&ADとSOMPO。3社とも高配当ですが、東京海上は規模が最大で、海外保険の比率が高いのが持ち味。指標は市場平均と並べて位置づけを見ます。
指標くらべ(自社/同業/市場)
バーの長さは水準のイメージ※ 損保同業=MS&AD・SOMPO等の目安。市場平均=東証プライムの概算。集計元・時点で変動します。
3メガ損保を並べる(概算・市場データ)
規模は東京海上が最大。3社とも高配当で、似た“高配当ディフェンシブ”として並びますが、海外の厚みで東京海上が抜けています。
| 会社(コード) | 時価総額 | 予想PER | PBR | 配当利回り |
|---|---|---|---|---|
| 東京海上HD8766 | 約13.4兆円 | 約15.8倍 | 約1.6倍 | 約3.5% |
| MS&AD8725 | 約5〜6兆円 | 約13倍 | 約1.2倍 | 約3.8% |
| SOMPO8630 | 約4〜5兆円 | 約12倍 | 約1.3倍 | 約3.5% |
東京海上は時価総額が最大でPBRも最も高い。「いちばん大きくて、いちばん高く評価されている」のが、ざっくりした立ち位置です(同業の数字は概算)。
評価は「買い」が優勢。
アナリストは1年後の目標株価と投資判断を出します。東京海上は海外保険の成長と株主還元が評価され、強気の見方が多数です。
投資判断(レーティング)の内訳
コンセンサスは「買い」。★★★★☆ 前後。
※ おおむね「強気・買い10:中立1:弱気1」程度の構成(集計元・時点で変動)。決算後に複数社が目標株価を引き上げました。
目標株価(1年後予想)
平均目標株価はおよそ8,100円で、直近株価(約6,900円)より1〜2割上。海外保険の成長と還元強化を評価する一方、「自然災害次第で振れる」という慎重論も併存します。
市場の関心はシンプルです——「海外保険の成長と運用益で、地力の利益を伸ばし続けられるか」。配当は安心でも、株価がさらに上がるには“災害を乗り越えた増益の証明”が要ります。
出所:みんかぶ・各証券レーティング報道等(2026年6月時点の概算)。目標株価・判断は各社・時点で異なります。
指数にも高配当投信にも、ほぼ必ず入る。
時価総額が国内トップ級なので、日本株のインデックスにはほぼ確実に組み入れられます。高配当・累進配当を狙う投信でも定番です。
パッシブインデックス投信・ETF
指数に採用 → 連動ファンドが自動的に保有
- 日経平均株価(225)主要構成銘柄。日経225連動のETF・投信が保有。
- TOPIX(東証株価指数)時価総額が大きいため上位構成。TOPIX連動型の定番。
- JPX日経インデックス400ROE・ガバナンス等で選ぶ“質”の指数にも採用。
時価総額が大きいほど、インデックスの中での比率も大きくなります。東京海上は日本株インデックスの主力の一つ。指数が動けば東京海上も動く、という関係です。
アクティブ高配当・累進配当系ファンド
高配当・大型・安定を狙う投信の定番
- 高配当株ファンド利回り約3.5%・大型で安定。日本の高配当株ファンドの王道的な組入候補。
- 連続増配・累進配当系7期連続増配・累進配当方針で、増配銘柄を集める投信に好まれる。
- バリュー・金融セクター系金利上昇の恩恵を受ける金融株として、関連テーマのファンドが選好。
出所:各指数の構成銘柄、運用会社の交付目論見書・マンスリーレポート等。保有比率は時点で変動します。
国内では「安定の高配当株」。
海外では「還元と資本効率」を評価。
東京海上は個人にも機関投資家にも広く持たれています。国内の個人は安定と配当を、海外の機関投資家は還元強化と政策株売却を評価する——両者の目線を並べます。
国内の個人投資家
- +日本最大の保険グループという安心感と知名度。「簡単には潰れない」という信頼から長期保有されやすい。
- +7期連続増配・累進配当。利回り約3.5%で、新NISAの高配当株として人気が高い。
- ±値動きは保険株のわりに大きめ。大災害や下方修正で急落することがあり、2026年1月も大きく下げた。
- -保険の中身(引受・再保険・IFRS)は分かりにくく、「大きくて配当が高い」という理由で持たれがちな面も。
海外の機関投資家
- +累進配当・自社株買い・政策株ゼロ方針といった株主還元・資本効率の改善を高く評価。東証の改革とも方向が一致。
- +北米中心の海外保険の成長と、買収で広げたグローバルな事業基盤を成長材料と見る。
- -自然災害・気候変動リスクと、海外保険の利益の振れ・買収のれんを警戒。大災害の年は真っ先に売られやすい。
- ±外国人比率が高く、世界的なリスクオフでは需給で大きく振れやすいのも大型金融株の特徴。
株主の内訳(概算イメージ)
特定の支配株主はおらず、外国人・金融機関・個人に広く分散。外国人比率が約4割と高いのが大型金融株の特徴です。なお損保業界では互いに株を持ち合う「政策保有株」が多く、その縮減(後述)が大きなテーマです。
財務と還元の素顔
会社開示の数字で見る「規模」と「株主還元」(26.3期)。
- 経常収益約8.87兆円
- 正味収入保険料約5.57兆円
- 純利益(日本基準 / IFRS)9,804億円 / 5,312億円
- 1株配当(前期 → 今期予)218円 → 245円
- 還元方針累進配当+自社株買い
規模は国内損保で最大。累進配当(減配しにくい)に機動的な自社株買いを組み合わせ、利益の振れに対して還元の安定を重んじます。健全性は自己資本比率よりESR(ソルベンシー)で管理されます。
出所:東京海上HD 有価証券報告書・IR資料、各金融情報サイト。株主構成・株主数は概算で、最新の開示をご確認ください。
利益が振れても、配当は減らさない。
東京海上を語るうえで外せないのが、累進配当です。災害で利益が振れる保険会社でありながら、減配を避け、配当を着実に増やし続ける——この一貫性が、東京海上の“顔”になっています。
累進配当とは、原則として減配せず、利益の成長に合わせて配当を増やしていく方針のこと。東京海上は1株配当を着実に積み上げ、27.3期予で7期連続の増配。年間配当はここ数年で大きく増えました。
保険は、大災害が出れば利益が一気に減る年もあります。それでも配当だけは守る。この姿勢が、「安心して長く持てる高配当株」という評価をつくり、PBRが1倍を超えて評価される一因にもなっています。さらに政策保有株を2030年3月末までにゼロにして資本効率を高める方針も、株主重視の象徴です。
メリット累進配当の強み
- 配当の安心感:原則減配しない方針で、災害の年でも配当が守られやすい。長期保有に向く。
- 連続増配の実績:7期連続増配(27.3期予245円)。利益成長に合わせて着実に増やす。
- 厚い総還元:累進配当に加え、4,000億円規模の自社株買いでEPSも底上げ。
- 資本効率の改善:政策株売却で生まれた資金を、還元と成長投資に回す好循環。
留意点“優等生”ゆえの宿題
- 利益は災害で振れる:累進配当でも、巨大災害が続けば配当原資の余裕は細る。
- 会計の分かりにくさ:IFRS移行で利益の見え方が変わり、配当性向の解釈も難しくなる。
- 株価の割安感は薄い:すでにPBR1倍超で評価され、再評価の“伸びしろ”は限定的。
- 海外・市場リスク:北米事業や運用が崩れれば、増配ペースの鈍化もあり得る。
※ 各社には、こんな“顔”があります——INPEXの黄金株、JTの政府保有、三菱商事のバフェット、MUFGのモルガン・スタンレー、NTTの連続増配。東京海上の顔は、災害で利益が振れても貫く累進配当。安定と還元の一貫性で存在感を示すタイプです。
金利・災害・為替・株式。
大きな波は、東京海上にどう効くか。
保険の巨人だけに、世界のテーマが様々な経路で効いてきます。追い風と逆風を整理します。
金利
追い風/運用益保険会社は預かった保険料を運用します。金利が上がると、債券などの運用利回りが改善し、運用益が増える追い風に。
「金利のある世界」への転換は、保険・銀行など金融全般にとって構造的なプラス材料です。
自然災害・気候変動
最大の逆風台風・地震・海外のハリケーンや山火事は、保険金の支払い増に直結。1件の巨大災害で利益が大きく振れます。
気候変動で災害の頻度・規模が拡大。再保険でリスクを移転しますが、コストも上がり、保険会社の宿命的な逆風です。
為替・海外経済
両面利益の約4割を稼ぐ海外保険(北米中心)はドル建て。円安なら円換算の利益が膨らみ、円高なら目減りします。
米国の保険料率(レート)や景気、訴訟環境も海外事業の採算を左右します。
株式相場・政策保有株
両面(売却で改善)保有する株式の値動きは、資産価値や運用益に影響。株高は追い風、暴落は逆風です。
政策保有株を2030年3月末までにゼロにする方針。売却で資本効率が改善し、得た資金を還元・成長に回します。
出所:各種報道・会社資料等(2026年6月時点)。マクロの影響は不確実性が高く、方向感を示すものです。
「国内の損保」から「世界の保険グループ」へ。
東京海上が描く長期の方向性です。近い将来は会社の計画、20年後は公表目標のない見立てとして、区別して読んでください。
- 純利益9,804億円(日本基準)
- 海外保険が利益の約4割
- 7期連続増配・累進配当
- IFRSへ移行し、地力の利益成長を明確化
- 海外保険(北米)をさらに拡大
- 政策株ゼロへ売却を加速し資本効率改善
- 海外の比率をさらに高める
- M&Aと再保険で災害への耐久力を強化
- 累進配当を続けつつ成長投資を回収
- 気候変動で災害リスクと保険の役割が増大
- サイバーなど新しいリスクの引受が成長機会に
- リスク:巨大災害の頻発で“振れの大きい巨人”のままも
近い将来は会社の方向性に沿っていますが、達成は環境次第で保証されません。20年後は不確実性が大きく、ここでの記述は一つのシナリオです。
累進配当+自社株買い。還元は“軸”。
東京海上は利益が災害で振れても、配当を着実に増やしてきました。累進配当と自社株買いを組み合わせ、株主還元を経営の中心に据えています。
1株配当は172円(25.3期)→218円(26.3期)→245円(27.3期予)と着実に増えてきました。災害で利益が落ちた年も減配せず増配を続けたのが東京海上の特徴で、配当性向は利益(修正利益)の約4割を目安に引き上げられています。
あわせて2026年度に約4,000億円規模の自社株買い(第一弾2,000億円)を予定。発行済株式を減らしてEPS(1株利益)を支え、配当と合わせた総還元を厚くする狙いです。
※ 配当・自社株買いは会社の方針で、将来変わる可能性があります。累進配当・連続増配は「過去の実績と方針」であり、今後を保証するものではありません。
出所:東京海上HD 2026年3月期 決算短信・株主還元方針(2026/5/20)。配当性向・利回りは予想と株価からの概算です。
安定株にも、見ておくべき4つの論点。
ディフェンシブで安心と言われる東京海上にも、保険会社ならではの弱点があります。良い面だけでなく、ここを併せて見るのが大切です。
自然災害・大規模災害
保険会社最大の固有リスク。台風・地震・海外のハリケーンや山火事など、1件の巨大災害で保険金支払いが膨らみ、利益が大きく振れる。再保険で緩和するが完全には消せない。
海外保険(北米)の振れと買収のれん
利益の柱だが、米国の保険料率・災害・訴訟・金利・景気に左右される。大型買収で積み上げた「のれん」が、想定外の悪化で減損になるリスクもある。
金利・市場リスク
巨額の運用資産と政策保有株を抱える。株安や金利の急変動が起きると評価損や運用悪化につながる。政策株売却の進み方も、年々の利益に影響する。
会計基準の変更(IFRS)
27.3期からIFRSへ移行。政策株の売却益が純利益に乗らないなど、見かけの利益・指標が変わり、過去との単純比較がしにくくなる。数字の“基準”を確認して読む必要がある。
東京海上は「安定配当株」だが「災害で振れる株」でもあります。累進配当の安心と、自然災害という固有リスクをセットで見るのが、この会社を理解する近道です。
このページの要点。
正体:東京海上は日本最大の保険グループ。1879年創業の日本初の保険会社が源流。国内損保(東京海上日動)を軸に、北米中心の海外保険・国内生保を束ね、利益の約4割を海外が稼ぐ。
決算:26.3期の純利益は日本基準で9,804億円(前期比−7.1%)。27.3期からIFRSへ移行し、政策株売却益が純利益から外れる。IFRS同士なら5,312億円→8,300億円の増益だが、日本基準比では減益に見える。基準をそろえて読むのが鍵。
指標:予想PER約15.8倍・PBR約1.6倍・利回り約3.5%。1倍割れから復活した銀行株と違い、PBRは一貫して1倍超。株主還元の厚さと安定が評価されるタイプ。
評判:外国人持株比率は約4割。累進配当・自社株買い・政策株ゼロ方針が海外勢に評価される一方、自然災害・海外保険の振れは警戒材料。アナリストは「買い」が優勢。
未来:成長の鍵は海外保険(北米)と運用益、政策株売却による資本効率改善。7期連続増配の累進配当は厚いが、巨大災害には常に注意が要る。